●10
お布団も干したし。
洗濯もした。
掃除だって。
今日の晩ご飯は、おでんだ。
午後、帰ってきてからのメイの時間は、そんな仕事たちで飛ぶように過ぎていった。
カイトが、残業ナシで帰ってくると言ってくれたのだ。
こんなに嬉しいことはなかった。
嬉しさの余り、勢いづいて全部やってしまったのである。
ふふっ。
そして、ことことと音をたてるおでん鍋の前で、メイの顔は思い切り緩んでしまった。
自分の右の手のひらを見つめてしまったのだ。
今日、何回こうやって眺めただろう。
書いてあるのは、カイトのケイタイ番号。
すぐにメモに書き写しはしたものの、どうしてもこの字が嬉しくて、消さないように一生懸命努力してしまった。
ボールペンなので、水なんかであっさり消えてしまいそうで。
ついついゴム手袋をしてしまったり、トイレの後は、そぉっと用心して手を洗ったり。
ちょっと消えてしまった部分はあるけれども、まだしっかりとその文字は手のひらに残っていた。
カイトの字。
それが、自分の身体に刻まれているのだ。無性に嬉しかったのである。
これのおかげで寂しくなかった。
家事をしては眺め、また何かをしては眺め、としていると、すぐにカイトの仕事が終わる時間になったのだ。
魔法の文字だった。
そうやって、まだしつこく眺めているうちに。
車が入ってくる音がした。
帰ってきた!
そんなに大きな音では聞こえない。
けれども、メイは手を眺めながらも、耳はダンボのように外の音を拾おうと頑張っていたのだ。
慌ててガスを切って、玄関の方へと駆けていく。
お布団も干したし。
洗濯もした。
掃除だって。
今日の晩ご飯は、おでんだ。
午後、帰ってきてからのメイの時間は、そんな仕事たちで飛ぶように過ぎていった。
カイトが、残業ナシで帰ってくると言ってくれたのだ。
こんなに嬉しいことはなかった。
嬉しさの余り、勢いづいて全部やってしまったのである。
ふふっ。
そして、ことことと音をたてるおでん鍋の前で、メイの顔は思い切り緩んでしまった。
自分の右の手のひらを見つめてしまったのだ。
今日、何回こうやって眺めただろう。
書いてあるのは、カイトのケイタイ番号。
すぐにメモに書き写しはしたものの、どうしてもこの字が嬉しくて、消さないように一生懸命努力してしまった。
ボールペンなので、水なんかであっさり消えてしまいそうで。
ついついゴム手袋をしてしまったり、トイレの後は、そぉっと用心して手を洗ったり。
ちょっと消えてしまった部分はあるけれども、まだしっかりとその文字は手のひらに残っていた。
カイトの字。
それが、自分の身体に刻まれているのだ。無性に嬉しかったのである。
これのおかげで寂しくなかった。
家事をしては眺め、また何かをしては眺め、としていると、すぐにカイトの仕事が終わる時間になったのだ。
魔法の文字だった。
そうやって、まだしつこく眺めているうちに。
車が入ってくる音がした。
帰ってきた!
そんなに大きな音では聞こえない。
けれども、メイは手を眺めながらも、耳はダンボのように外の音を拾おうと頑張っていたのだ。
慌ててガスを切って、玄関の方へと駆けていく。


