冬うらら 1.5


 そうなのだ。

 社長と副社長は、同じ家で生活しているのである。

 ということは、社長が結婚しているかどうかくらい、彼は知っているハズだ。

 大体。

 やはり、どうしても信じられなかった。

 あの社長が結婚しているという事実を。

 要素の一つとして、ハルコの存在があった。

 彼女は、秘書の職を彼女に渡し、結婚退職したのである。

 その後ハルコが、社長宅にハウスキーピングに入ったということは聞いた。

 奥さんがいるのに、わざわざ家政婦を雇うだろうか。

 ますます、あの「自称:妻(?)」について疑わしさが増すのである。

「社長は、女性の方が訪ねてこられて、出かけられたようです」

 リエは、副社長の表情を伺いながら、ゆっくりとそう言った。

 ここで彼が、少しでも驚くような素振りを見せるなら、結婚の話はウソだろう。

 そう彼女は予測したのだ。

 しかし。

 思えば、副社長が驚いた顔など、彼女は見たことがなかった。

 案の定、彼は別段表情変えることなく、しかも、こう言ったのである。

「そうですか」


 そうですか―― こう言ったのだ。