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カイトは、自分の胸ポケットのボールペンを取る。
これはメイが、会議室で出したヤツではなかっただろうか。
婚姻届けに、最後の記入をしたヤツだ。
その記念すべきボールペンで。
「手ぇ…出せ」
とっさに書くものを見つけられずに、メイにそう言った。
「え?」
きょとん、と茶色の目が丸くなる。
「いいから、出せ」
と言いながら、すでにカイトは窓から手を伸ばすと、彼女の右手を捕まえて引っ張った。
その手のひらに。
090-○○○○-××××
その白い柔らかい手のひらに、一瞬とまどいはしたが、カイトは筆圧をかけすぎないように注意しながら、そう書き込んだ。
ケイタイ番号だ。
教えていなかったのだ。
だから、あんな秘書室経由で、まどろっこしいことになったのである。
このままでは、もし緊急事態になった時に、連絡を付けることが出来ないではないか。
しかし、これだけではまだ不安だ。
彼女から自分に電話はかけられても、自分からメイを捕まえることは出来ないのである。
ずっと、家にい続けるワケではないのだから。
ケイタイが、もう一つ必要だった。
しかし。
とりあえず今は、これで少しだけは安心できる。
書き終わって手を離してやると、彼女はそれを顔の前に持っていって眺めていた。
「何かあったら…かけろ」
いや、別に何もなくてもかけていいのである。
それどころか、何かあってもらっては困るのだ。
そんな複雑な心理のまま、カイトはその程度のことしか口に出すことは出来なかった。
メイが。
嬉しそうな笑顔になった。
たかがケイタイ番号で、そんなに幸せそうになれるのなら、あと何回でも教えてやりたいくらいだった。
しかし、同じ番号を2回教えたとしても、もうその魔法はきかないだろうが。
カイトは、自分の胸ポケットのボールペンを取る。
これはメイが、会議室で出したヤツではなかっただろうか。
婚姻届けに、最後の記入をしたヤツだ。
その記念すべきボールペンで。
「手ぇ…出せ」
とっさに書くものを見つけられずに、メイにそう言った。
「え?」
きょとん、と茶色の目が丸くなる。
「いいから、出せ」
と言いながら、すでにカイトは窓から手を伸ばすと、彼女の右手を捕まえて引っ張った。
その手のひらに。
090-○○○○-××××
その白い柔らかい手のひらに、一瞬とまどいはしたが、カイトは筆圧をかけすぎないように注意しながら、そう書き込んだ。
ケイタイ番号だ。
教えていなかったのだ。
だから、あんな秘書室経由で、まどろっこしいことになったのである。
このままでは、もし緊急事態になった時に、連絡を付けることが出来ないではないか。
しかし、これだけではまだ不安だ。
彼女から自分に電話はかけられても、自分からメイを捕まえることは出来ないのである。
ずっと、家にい続けるワケではないのだから。
ケイタイが、もう一つ必要だった。
しかし。
とりあえず今は、これで少しだけは安心できる。
書き終わって手を離してやると、彼女はそれを顔の前に持っていって眺めていた。
「何かあったら…かけろ」
いや、別に何もなくてもかけていいのである。
それどころか、何かあってもらっては困るのだ。
そんな複雑な心理のまま、カイトはその程度のことしか口に出すことは出来なかった。
メイが。
嬉しそうな笑顔になった。
たかがケイタイ番号で、そんなに幸せそうになれるのなら、あと何回でも教えてやりたいくらいだった。
しかし、同じ番号を2回教えたとしても、もうその魔法はきかないだろうが。


