冬うらら 1.5


 彼女が、もう少し自分の側に、近付いたような気がしたのだ。

 お互い知らないことだらけで、一生懸命相手のことを探って失敗して。

 少しずつ、メイが自分に近付いてくるように思えた。

 一時は、世界の裏側まで離れているように思えたのに。

 不意にこぼれたカイトの笑顔に。

 メイが、ビクンッと震えて硬直した。

 視線は、彼に向けたまま。

 そんなに自分が変な表情をしていたのかと思って、カイトは慌てていつもの顔に戻った。

 すると―― みるみる間に、残念そうな表情になるのだ。

 一体、何だってんだ??

 彼女のこの態度の変化の意味が分からずに、カイトは困惑してしまう。

「あの……一つお願いをしていい?」

 残念そうな表情が、今度はいいコトでも思いついたのか、少し明るくなる。

 そして、彼女の口から信じられない言葉が出てきた。

 お願い。

 お願いしていい?

 カイトは、心の中にぱっと花が咲いたように思えた。

 メイの口から、彼にお願いとやらが来たのだ。

 その言葉で、こんなに自分が昂揚するとは思ってもみなかった。

 もう、何でも欲しいものを言え、というところだ。

 昂揚の余り、すぐに答えられないでいたが、その表情からOKだと理解したのだろうか。

 メイは、続きを言おうとした。


「あの、ね…あの………もう一回…笑って」


 ドンガラガッシャーン!


 心の中で、山積みの灯油缶の中にバイクを突っ込ませてしまった。

 何を言い出すかと思えば。

 笑顔!

 しかも、カイトの、だ。

 そんなものを彼女は、お願いしてきたのである。