冬うらら 1.5


 こっぱずかしい表現かもしれないが、本当にカイトはそう思ったのだ。

 いまが冬だということを忘れさせるような、ちょっと暑い初夏のような笑顔である。

 欠けることなく、明るく高い温度を持っている球体。

 反射的に、カイトはそれに目を細めてしまう。

「あぁ…」

 目を彼女に奪われたまま、それだけを口にした。

 メイの目も細くなる。

 給湯器のスイッチを切って、改めて振り返った瞳を細めて。

「ありがとう、すごく、すごーく嬉しかったの…本当にありがとう」

 そんなお礼を言うのだ。

 一瞬、カイトの胸に昔がよぎった。

 助けてくれてありがとう。

 そういう響きを持つものだ。

 あの頃は、彼女に感謝なんかされたくなかった。

 あんな上下関係を、溝を、壁を、はっきり見せつけられるような感謝なんて、本当に大嫌いだったのだ。

 そうか。

 カイトは思った。

 こんな感謝もあるのか、と。

 嬉しくてしょうがなくてあふれ出た感謝の声と、昔の言葉が―― 比較になるはずもなかった。

「礼なんていい…」

 夫婦になったのだ。

 短絡的に言えば、もう何もかも2人の持ち物なのである。

 家も金も、お互いの存在さえも。

 だから、たとえ声音や言葉が昔と違ったとしても、お礼なんて必要なかった。
 
「ううん! すごく嬉しかった、すごくありがとう!」

 興奮していたのか。

 彼女は、妙な言葉になった。

『すごくありがとう』

 妙だが、メイらしい言葉のように思える。

 それで、カイトはクッと笑ってしまった。