(結局、こいつらなにがしたいんだ)
「…今にもくたばりそうなガキが目の前に居るってのに、そのまま見殺しになんて出来るか。そんなことしたら明日食べる猫まんまが不味くなる」
随分と自分勝手な解釈のようにも聞こえたが、初めて真っ当な人間の言葉を聞いた気がした。
今まで見てきた大人達とは、違う。
「…ま、あんたの身の安全と生活が確保出来る場所まで連れてってやるから、ついておいで」
そうして手渡されたずっしりと重い円筒の中身は水だった。
飲め、ということらしい。
海水か、と警戒して匂いを嗅げば。
「飲みなよ。汚染された海水じゃなければ毒水でもない。なんなら毒味させようか」
そうして水筒を奪われたと思えば、男は女の口にそれを突っ込んだ。
当然驚く女、口から溢れる透明な水、嚥下する喉、涙目で噎せる女。
「ね、大丈夫だったでしょ」
「…っなにが、大丈夫だったでしょだ、テメッ、ふざけんな!」
そうして再び水筒を渡されたはいいが、目の前で喧嘩というか、じゃれあっているというか…をされたら乾いた喉を潤す気も起きない。
しかし初めて見る美味そうな飲み水に、喉は素直に鳴る。


