「…ああ、それと」
雲雀がもう一度俺を見やる。
まだなにかあるのか、と赤い頬を湛えながら顔を上げると。
「君が着ていた服、橘が精魂込めて綺麗に洗ったから、大事にしまっておいてね」
予想外のことに、比喩ではなく目が丸くなった。
「捨てたんじゃ…」
「…?なに言ってるの?」
嬉しさが胸の底で弾けて、雲雀の訝しげな視線から勢いよく顔を反らした。
それでもやっぱり照れ臭くて、テラスに思いきり飛び出す。
真っ赤な頬をからかう野次が背中に当たって、あっという間に光の洪水に飲み込まれた。
眩んだ視界が一番に捉えた、春めいた庭に咲く色とりどりの植物達。
―――穏やかな風は子守唄を歌い、燦々と輝く太陽が栄養を与え、雲から落ちる清涼の水滴が潤し、そうして美しく咲く命の花は、どこまでも優しかった。
ほら、この世界はまだ生きている。
「腐る世界と、再生」完


