「…私も、あんたと同じ荒野で産まれたんだよ」
俯いて涙を浮かべている俺に、苦笑したような声色が届いた。
「おなじ…?」
ミチコの言葉を咀嚼するように繰り返して、ゆっくりと視線を上げる。
釣られて一粒、涙が落ちた。
―――視線を上げた先。
そこにはもう生々しい肢体はなく、それは雲雀が手にした白い布で覆われていた。
さらりと鳴る衣擦れは、倫子を守る雲雀の盾だ。
「まあ、荒野といってもあんたが生活してた場所とは逆方向なんだけどね」
にやり。
そう笑った倫子に、先程の面影はない。
ミチコの身体を抱くようにして立ち上がったヒバリが、ベソをかく俺に視線を移してきた。
深海など見たこともないが、きっとこの眼のような色をしているなだろう。
潔く冷ややかで、蒼い月を思わせる。
責められているような、諭されているような、その切迫した感覚に思わず、呼吸を止めていた。
神からの啓示を待つように、心臓は限界まで跳ねて、聞き逃すことなど許されない。
「道」に、導かれてゆく。


