既に自分はボロボロの衣服は身に付けておらず、奴らの「こども」と同じ白い服を身に纏っていた。
肌触りのいい衣服の感触が、肌に馴染まない。
―――穏やかな時間のなかで呼吸していることが、いやに居心地悪かった。
(…俺の服は当然、廃棄されてる、よな)
父と母が、自ら身に付けていた諸々の布を繋ぎ合わせて作ってくれた唯一のものだったが、この大きくて上品な邸には似合わない。
汚ならしく、だらだらと生き抜いてきた執念が染み付いた服。
「…おまえらは、」
優しい時間の中で穏やかに過ごしてきた、幸せなふたりを前にして。
―――俺達の苦しみなんか、知らない癖に。
「お前らは、そうやって」
俺たち荒野の人間が、全ての施しに対して、両手を挙げて喜ぶと思っているのか。
情けをかけられて、憐れまれて、お前達がはじめから手にしていたものを分け与えられて、幸せだと。
「なにも持たない俺達に、お前等が使い古した物を分け与えて、俺達が素直に喜ぶとでも思ってるのかよ…!」
起き抜けの枯れた悲鳴は無様だった。


