「ヒカリ、お腹空いてない?おいで!」
現状が把握できず、呆然と立ち尽くす俺を倫子が手招きする。
倫子の寝転がっている傍らには、きちんと調理された食事が用意されていた。
そんなことより、と口にしようとして――腹が鳴る。
「ほら、来い」
横になりながら爆笑する倫子の腹を軽く踏み上げ、素直に料理の前に座る。
「…食べたら、」
雲雀に促されて口にした温かなスープがじわり、身体の中を暖める。
カチリ、高級そうな銀のスプーンが歯に当たり、びくりと肩が跳ねた。
「ここ、どこだよ」
この場所が自分の産まれ育った荒野ではないことは確かだ。
庭には鮮やかな花々が咲き乱れているし、なにより雑音が聞こえてくる。
生物が息づく音すらしない荒野とは違う。
生活圏の音がする。
「街にある私達の家……正確には雲雀の弟の家、かな」
屈託なく倫子が笑う。
その笑顔に、どくりと心臓が跳ねた。
(やっぱり、こいつらと俺とは違うんだ)
育ちも考えも苦しさも辛さも、なにもかも。


