「動けるか?」
優しげに手を差しのべられた。
目を凝らしても穏やかな空気しか纏っていないその手に、警戒心も忘れてつい手を伸ばす。
「ここ、どこ…」
握った手は暖かく、優しかった。
この手を、俺は知っている。
「俺達の家だよ。今日からは、君の家にもなる」
さらりと言われた言葉が理解出来ないままベッドから立ち上がる――柔らかなベッドになど、初めて寝た。
身体が痛かったのはそのせいだろうか。
「隣の部屋に俺達の両親が居る。目が覚めたら知らせろと言われてるんだ」
柔らかな笑みはまるで陽溜まりだ。
周りを駆けている小さなこども達はなんの脅威に晒されることなく笑っている。
絵を描く者、庭の美しい花を愛でる者、まどろむ者。
皆が皆、成人とは言えない少年少女ばかり。
「…呼んでるよ」
部屋の扉を開けて入ってきたのは、美しい少女だった。
真白のワンピースに身を包んだ、やはり優しい瞳をした。
少女はこちらまで歩み寄ると、立っていた青年の身体に腕を回しハグをして挨拶を済ませる。
それから俺の顔を見て、まるで姉のようなにこやかさで笑みを浮かべた。


