「―――とにかく、ヒカリの体力も充分確保したし、もういいよね」
そう言って、雲雀は倫子を抱えたまま俺まで抱き上げた。
こいつらと出会ってから、視線は頻繁に高くなるが未だに慣れず戸惑う。
「…なにすんだよ」
断りもなく抱え込まれて、訝しげに眉を寄せれば。
「飛ぶよ」
は?
「もう此処を荒らされる心配もないし、僕たちが居座る必要もないから、一先ず橘の脚を治療しなきゃね。初めてのテレポートは死ぬほど苦しいらしいけど、頑張って」
雲雀のその一言に、すんません、と倫子が口にした。
そして俺は、別の意味で追求しようとして、途端、ぐにゃりと脳味噌が溶ける感覚に追い立てられた。
「…っ、うわ」
急激に視界が狭くなり、聴覚を塞がれてしまったかのような窮屈感が襲う。
全身から力が抜けて、皮膚という皮膚、細胞という細胞が、小さな光の粒となって弾け飛んでしまいそうな、怖気立つ感覚。
まるで独りの夜に頭から丸飲みされるような――恐怖と孤独。
そうして俺は、意識を失った。


