「あんた等クズの私欲の為に、一体何人が犠牲になったと思う?くたばれ、下衆が」
ぎし、と鋭い視線を向けて、倫子は忌々しげに言い放った。
一度睨まれれば、心臓が凍りついてしまうほどの、強く鋭い眼光で。
それに対して、雲雀は。
「大体、君達みたいな愚者は、官僚を目指す真鶸の邪魔になるし」
「兄ちゃんは弟に甘いんだぞ、ばーろーっ!」
ふざけているのか本気なのか解らないが、迫力だけはあるふたりに盗賊共は恐れをなしたように後退りした。
「略奪、暴行、殺戮…そんな非生産的なことばかりしてないで、土を耕すことを覚えたらいい」
雲雀が冷ややかな目許を憂うように緩めた。
揺れる睫毛、無感情な眼。
息を飲むほど、綺麗な動作だ。
「…略奪で自分を満たすのは、それは簡単だろう。弱い者で寄せ集まって強く振る舞ったって構わない。こんな時代だ、嘆くのも絶望するのも逃げるのも、解らなくはないけど」
倫子が雲雀の言葉を継ぐように口を開く。
じわりと滲む倫子の空気が、辺りを振動させているようだった。
いつもなら雲雀が目立つその平坦な気配は、けれどこんな時だけ、凶暴なまでに鮮烈になる。


