『本物の救世主だよ』
『この世の救いだ』
それはあくまで実体のない虚像に過ぎなかった。
この目で確認したわけでもなく、何処何処の村に現れたと話を聞いただけで、憧れ、縋り、崇める。
そんなものに頼るしかない大人達が、情けなかった。
幻想じみた希望に縋り着く前に、自ら踏み出すことをすればいいのに。
―――あぁ、でも、まさか。
「南からまわったからさぁ、こっち側に来るのが遅くなっちゃったんだよね」
残り少数になってしまった盗賊達を前に、倫子は朗らかに笑った。
それを聞いて、生き残っていた男達がびくりと肩を震わせる。
「あんた達、政府から報酬を貰って汚い仕事をしてるらしいね」
それは彼らに限ったことではなかった。
政府と盗賊――対極にある筈のそれは、実は裏では密接に関係している。
政府にとって荒廃した土地に暮らす貧民は邪魔な存在でしかない。
地球を蝕む蛆だとでも認識しているのだろう。
だから同じ蛆虫に、非力な蛆退治を依頼するのである。
(…俺の父ちゃんもある意味、その被害者だったんだ)


