「俺にヒカリって名前を付けたのも、「光」は全ての源だからって、男の癖にロマンチストで」
いかつい顔で眼をキラキラさせて、毎日、早くに死んだ母ちゃんに愛してると祈るような、恥ずかしい男だった。
でも俺は、尊敬してたんだ。
そんな父の背中を、小さい子供なりに追いかけて、必死に、横に立とうとして。
きっと。
「誇りだったんだ」
それなのに、死んでしまったから。
「たまたま寄った村で盗賊に逆らって、それで殺されちまうなんて、バカだ…」
枯れた筈の涙がぼろぼろと流れていく。
しょっぱいこの水が、緑に有害でなければいいと頭の隅で考えながら。
「…うっぁ、」
嗚咽を上げたと同時に抱き締められた。
柔らかで暖かな胸に抱かれて、髪を撫でられる。
―――無言のまま、倫子に抱き締められていた。
泣き場所を提供してくれただけのその腕のなかは事の外優しくて、また嗚咽が漏れてくる。
あぁ、世界は、優しさで溢れている。
『お前にも、きっとできるよ』
夢物語を語る、父ちゃんの声。
『一緒に、この国を緑の国にしようなあ』
皺だらけのごつい手で、土で黒くなった爪で、俺を育ててきた男はそう言って笑うのだ。


