「雑草は生命力がとても強いんだよ。摘んでも摘んでも産まれてくる。だからあんたは安心してパンをかじってればいい」
もそもそとパンをかじる俺の頭を撫でて、倫子が笑う。
―――さやさや。
目に眩しい緑達が、ふたりを母と慕うように囁いた。
「…おまえら」
一体、何者なんだよ。
俺の問いは、ざわりと吹いた一陣の風に掻き消されてしまった。
そんな下らないこと、今はどうだっていいと、緑達が言っている気がした。
きっと、この草木を見ていると思い出すからだ。
「…俺の父ちゃん、植物学者だったんだ」
倫子と雲雀が、食べる手を止めてこちらを見ている。
さやさやと鳴る緑達が、促すように体の下で揺れた。
「貧しい村々に無害な作物を配る旅をしてた。枯れた大地じゃ農作は難しいけど、できないことはないんだって」
貧しい人を救えて、更に大地も緑で一杯になる。
こんな素敵なことはないだろう。
それが、口癖だった。


