「ピクニックしようよ」
橘のそんな一言で、昼にはまだだいぶ早かったが食事を広げることになった。
柔らかな風が吹き溜まるこの場所で。
なんて贅沢なんだ。
その日その日で食事できるかできないかの瀬戸際で生きてきた俺には、三食摂るという概念はない。
そんな俺を緑の絨毯の上に座らせ――ふわふわちくちくしてちょっと擽ったい――倫子がバターを塗ったパンを寄越す。
「…ここ、潰していいのか」
けれど俺は、自分が敷き潰している草のほうが気になった。
夜露に濡れた柔らかで青臭いそれは、俺の体重で押し潰され様々な方向に折れ曲がって萎びてしまっている。
折角ここまで育ったのに、潰して枯れてしまっては余りにも可哀想だ。
「…あんた、意外と優しい子なんだね。おかーさんは嬉しいよ」
そんな俺を倫子がからかう。
そんな倫子の横で、雲雀は紅茶を器に移しながらぷちりと葉を千切ってみせた。
「君に心配されるほど弱くないから、大丈夫」
千切った葉を、はらはらと俺の頭に落としてゆく。
柔らかなその音に耳を澄ませて、雲雀に言われたからには納得するしかないとパンをかじった。


