「…っうぁぁあぁ、あ」
泣いてしまうほど、嬉しくて。
相変わらず乾いている風に、さらさらとみずみずしい葉が揺れている。
風の吹き溜まり、最終地点に立つ俺の鼻を、さっきと同じ、青く柔らかな香りが擽った。
「初めて葉が咲いた時の橘と同じ反応してる」
「…恥ずかしいから思い出させんな」
「なんで。二目と見れないぶさいくで可愛かったのに」
「殴るぞ」
ただボロボロと涙を流す俺の背後でそんな会話が繰り広げられている。
穏やかな風が涙の跡を冷やしては過ぎ去り、初めて、「やさしかった」ことを思い知らされた。
(…父ちゃんが守りたかったものが今、此処にあるんだ)
『お前にもいつか、見せてやるからな』
優しい声が緑に染みてゆく。
さやさやと耳を擽る初めての音に、また、涙が出た。


