貧困と餓え、貧窮に陥った集落間の紛争、身分格差、環境の劣化。
この世界をダメにしているのは人間だ、間違いない。
苦しみだけがこの世の理であって、絶対の存在価値。
この世界に産まれおちたことすら呪った。
そう思いながら死ねない自分を情けなく思い、それでもやはり生を手放せないでいる。
(…でも、もう)
終わりかもしれない。
腹の蓄えもなく僻地へと放り出された今回の長い放浪。
既に限界は越えていた。
ただこの世への憎しみと憤りだけでひたすら進んできたに過ぎない。
(し、ぬ)
きっともう、終わるのだろう。
(最近じゃ、やっと太陽が見えてきたっていうのに)
がくり、力なく膝を着いた足は情けなく崩れ落ち、ばたん、仰向けに倒れた視界には鮮明なる蒼。
まだまだ重く有毒な雲に覆われることが多い中、近年、少しずつ変化が起きていた。
『神様が現れたんだと』
『天候すら左右する、素晴らしいお方なのだと聞いたよ』
『きっと、世界を救ってくれる』
集落のバカ共がそんな噂を口にしていた。
救世主、神様。
(…バッカじゃねーの)
そんな綺麗事、この汚い世界が許すわけがないのに。