「…殺したのか?」
そうだというのに、恩知らずなこの口はそんなことを口走る。
一瞬の間を置いて、ヒバリとミチコは驚いた様子もなくただ静かに俺を見つめてきた。
俺は今、どんな顔をしているのだろう。
ヒバリの真っ黒でまっさらな瞳が揺れることなく俺を映していた。
何事を語るわけでもないその様子は、ただじっと俺を値踏むように据えられている。
(―――風の鳴る外界から隔離された箱庭で、罪を知らぬ赤子は、)
自ら口走っておきながら、沈黙が居たたまれなかった。
「…殺したほうが良かった?」
数秒して返ってきたそれは、問いを問いで返すという狡く卑怯なそれだったが、嫌な感じはしなかった。
ヒバリが口にすると、純粋な問いに聞こえる。
或いはそれらを超越した、なにか。
なにも答えられずにいると、ミチコが俺の腹を撫でながら呟いた。
「…殺さないよ。それをしたら、下衆と同じだ」
―――下衆。
この世に蔓延る「人」をそう言うのだ。
産まれた時から刷りこまれている、唯一の真実。


