カサカサカサ。
―――真夜中。
「ん、」
耳を掠める渇いた音に、深く沈んでいた筈の意識が浮上した。
カサカサカサ…。
(なんだ…?)
耳鳴りに紛れる物音。
カサカサカサ。
少しずつ大きくなっている。
(…足音?)
カサカサカサ。
(近付いてくる)
やはり足音だ。
この荒野を吹き荒む音は、風が抜ける音か唸り。
草木は殆ど生えていないから、枯葉や枯れ枝が擦れる音じゃない。
(…やっぱり足音)
となると該当するのは盗賊だ。
この荒野で奴らと出くわせば、身ぐるみ剥がされて殺される。
一気に眠気の覚めた頭で瞼を持ち上げた。
場所を特定されかねない火は既に消されていたが、この洞窟は夜目にも目立つ。
(休息の為に向かってるのか?それとも…)
鉢合わせたら不味い。
しかし幸いなことにこちらには「アダム」が居る。
相手がこちらに気付いていないなら、まだ助かる可能性がある筈だ。
早くヒバリとミチコを起こして逃げなければ―――。


