「僕も寝るから詰めて」
雲雀にもう一度繰り返されて、慌ててミチコに体を寄せた。
ヒバリには異様な迫力があって、つい言う通りにしてしまう。
「雲雀、おやすみのちゅうは」
「ヒカリの教育に悪いから、今日はだめ」
俺を間に挟んだままそんなふざけた会話を繰り広げる。
明らかに俺をからかってやがるのがムカつく。
両側から抱き締められるように回された腕は暖かくて柔らかくて、でも少しだけ重くて、けれどそれが優しかった。
臭い上に汚らしい俺の体を厭うわけでもなく、ただ普通に、そうごく普通に「個々」として俺と向き合っている。
(はずかしい)
こんなの、初めてだ。
まるでそう、「親子」がするような―――。
「ヒカリ、あったかいなぁああ」
「おもい」
「橘、ヒカリを潰さないで。それにひっつきすぎ」
ミチコの額を弾きながら、雲雀の手が緩やかに俺の頭を撫でる。
なんだこれなんだこれなんだこれ…。
俺の中に沸き上がる、妙に不可思議で曖昧な感情。
俺たちはだって、今日会ったばかりの人間なのに。
(―――この夜、俺はかつてないほど優しい夢を見た)


