この褪せた世界で、こんなにも柔らかく互いに惹かれあっている「ふたり」を初めて見た。
(周りの奴等はいつも喧嘩ばかりしてたし…)
それは決して不幸な環境などではなく、それが現実であり摂理であり、常識になりつつあった。
(物悲しい世界を見てれば、そりゃあ誰だって殺伐とするよな)
けれどこのふたりには、それがないのだ。
穏やかで緩やかな空気を知っているからこそ、このふたりはこんなにも優しく笑っているのか。
こいつらは、きっと幸せな毎日を送ってきたのだと思う。
この世界じゃ、稀有なほどに。
(羨ましい奴等)
独りじゃなく、なにより幸せで、そして新人類。
(選ばれた奴らだけが幸せになれる世界)
少しだけ、不平等なそれにムカついた。


