ずっとずっと、ずっと先へと延びる地平線を宛もなく進んでいた。

進んでいた、という言い方はおかしいかもしれない。


(…漂っている)

目的も意図もなく、ただ淡々とその作業をこなすだけ。
二週間、飲まず食わずのこの体はそれすら拒絶するかのように言うことをきかなかった。

(つかれた…喉がいたい、)

思えば毎日毎日、同じことばかり考えている。

おなかがすいた。

のどがかわいた。

つかれた。

ねむい。

くるしい。



(…つらい)



一月程前、身を寄せていた集落から追放された。
原因はなんだったのか詳しくは知らないが、恐らく余所者に対する慈悲はないと言うことだろう。

身を寄せていたと言っても、たった数ヵ月ぽっち。
気付いた時には荒野を流離う立派な放浪者になっていた自分には、珍いことでもなかった。


(…足がいたい)

もう歩く気など毛頭起きなかった。
ぐらぐらと湧いていく頭に、最早理性などない。

この苦しみしか産まぬ世界を呪ったのは、何度目だろうか。