「アイツ、前より性格がまるくなったのは良いんだけどさぁ、最近赤の他人にまで優しくなっちゃってんだよね。この前なんか街でぶつかった女の子に手なんか差し出しちゃってさぁ、いや、無表情ではあったんだけど、あの雲雀がね、あの雲雀がよ?あの雲雀が赤の他人に大丈夫?つって手ぇ差し出すってなに」
知らねぇよ。
「あの雲雀が」って繰り返しすぎだろ。
「結局、その子は雲雀に惚れちゃってさあ。久々の休日だったのにあっち行きゃ居て、こっち行きゃ居て、終いには家までついてきちゃうし。挙句の果てに私に向かって「雲雀様にこんなガサツな人、似合わないと思います!(裏声)」だよ?ふざけんなクソアマ。すんげームカついたわ。思い出すと腹立つ」
そんな下らないことを言い募るミチコの後ろで、ヒバリが無表情なりに少しだけ嬉しげに頬を緩めていたのは俺だけが知っている事実。
一体、どの辺りの言葉が嬉しかったのか俺には皆目見当もつかなかったが。
(ていうか、わかりたくねぇよ)
そんな二人をうざったく感じながら、けれどその空気が心地好かったのは確かだ。


