老体は器に盛られた胡桃を一つ噛み潰した。
無機質な甘さが下に張りついて余計に眉間の皺が深くなる。
『いい返事を期待している』、と言って出ていった。
土産だと置いていった袋の中身がまた器に盛られ、ごろりとあらぬ音とともに器からこぼれ落ちた。
拾ってやる気にもなれない。
かつての雷神はセピアに色褪せた真っ赤な戦火中を思い出して涙する。
地獄へ引き摺るかのように重たくまとわりついていた赤い液体の感触を、まだ左手にすら残していた。
先がぽっかり姿を消した、哀れみと憎悪の交じる肩口も。
よく生きたと皮肉りたい痛みを伴いながら、夢を馳せた。
語り継がれぬ英雄ほどむなしいものはない。


