胡蝶の翅




「陛下がお会いしたいんだってよ」


ぶっきらぼうに言った。

今目の前にいる人物を、なんと呼ぶべきか、その呼び名を男は知らぬ。


だからせめてもの敬意を込めて、『貴様』と呼ぶのであった。




「いつから召使になったのだ、貴様は…騎士だろう。」


誇りを持てと老体は言う。

騎士ならば我が身在るのを誇りと称え、主君に忠誠を誓い一生を以て誠意を尽くせと。


「狼も飼われれば犬と成り果てるか…それはいい。

だが忘れるな。
騎士が墜ちれば主君も堕ちる、騎士は常に戦うがためにあれと」


「ふん」




見下すように笑われた。

どうせ老人の戯言と右から左へ受け流すことだろう。


「悪いが犬にはなれない。
飼われといえども盲従はしない、所詮主君など目的のない手段に過ぎない」



「………」