――あの日から、30年後。




「ねぇねぇ、お母さん!これって、お母さんの卒業アルバムだよね!?」



仕事で帰りが遅い夫より一足先に夕食を済ませて、私と娘の分の食器をキッチンで片付ける。



そんなもう慣れた日常のひとときの中で、我が家には娘の興奮した声が響き渡った。



何事かと思い手を止めて振り向くと、今月高校を卒業する娘がバタバタとうるさく音を立てて階段を下りてきているところで。



リビングに勢いよく走り込んできた娘は、興奮気味で息が上がっている。



そんな娘の手には一体どこから持ち出して来たのかは分からないけれど、見覚えのある高校の卒業アルバムがしっかりと持たれていた。