また、一位になれなかった。
だからと言って親に叱られるということは無いのだが、許さないのは彼女のプライドだ。
あれだけ頑張ったのに、あたしは一位になれない。
それだけがどうしようもなく悔しくて悔しくて、悔しくて。
ついには涙さえ出て来た、そのとき。
「え……?」
多江は今まで目にやっていなかった場所を視界に捕らえた。
その場所を見た瞬間、涙は綺麗に引っ込んだ。
――嘘、でしょ。
心の中で呟いたそれ。
だが決して嘘ではない。
通知表にはそう書いてあるのだから。
秋本多江のクラス順位が――二位なのだと。
それはつまり、学年での一位の生徒が、この二年二組に居るということ。
そして多分その生徒は、今まで多江がなりたかった一位に居た生徒なのだ。
――一体、誰が……?
多江は暫く、通知表から目が離せなかった。
