いじめがえし


◇◇

全てのテスト返却が終われば、次は通知表を貰うときだ。

多江はこのときをずっと待っていた。生徒一人一人に山口が手渡して行く。通知表を開いた生徒は順位の結果に落ち込む者、喜ぶ者、特になんの反応もしない者、様々な表情でそれを見ていた。

男子から渡されて行くので、それが終われば真っ先に名を呼ばれるのは秋本多江だ。
心臓が早鐘を打つのがわかる。多江は息を整えながら、名前を呼ばれる瞬間を待った。

――大丈夫。全ての点数は今まで以上にいい点数だった。


「――次、女子行くぞ。秋本」


平静を保ちながら、ゆっくりゆっくりと椅子を引いて立ち上がった多江を、亜子は不思議そうに見ていた。

――何か緊張しているのかな。

亜子は多江の席の列の一番後ろの席だ。それ故に多江の行動はよく見えるし、不審に思った。