いつも長い黒髪を結いもせずに背中に流している亜子は、やはり話し掛けづらい空気を纏っている。
亜子と香美は、誰もが認めるほどに対照的な二人なのだ。それでいてやけに親しいのが理解出来ない。
「ほんと、こーみちゃん可愛いのに篠宮さんと居て勿体ないよねー」
「だから、そんなことどうでもいいじゃない」
「また多江はそんなこと言ってー」
「仲がいいんだから一緒に居るだけでしょ。あたし達に関係ある?」
「ないけど…」
相変わらず他人に興味がない多江は、千波の言い分が全くと言っていいほど分からない。そんなことは、多分話題の二人も関係ないと思っているに違いないのに。
千洋が黙ったまま例の二人組を見続けているものだから、多江は少し気になった。
「千洋?」
「え?」
「何見てたの? 桜田さんか…えーと……篠宮さんに惚れた?」
