ただし、〝女顔〟や〝美人〟など、女性を連想される単語が嫌なだけで、普通にかっこいいのだと褒めれば優一は何も言わない。それも多江たちは分かっている。
仲のいい友達だが、その友達と付き合って行く為には少なからず気遣いは必要なのだ。
「――あ」
ふと、優一を眺めていた千波が別の方へ目を向けて声を上げた。
そこへ三人が視線を向かわせると、ある二人組が教室へ入って来た。
亜子と香美だ。
「こーみちゃん、おはよー!」
香美だけに向けられたその大声に、香美はそちらへと顔を向け笑顔でおはようと返した。香美の隣に居る亜子は気にする様子もなく自分の席に座った。
「…誰だっけ、桜田さんの隣の子」
「もーやだ多江、こーみちゃんは覚えたのに篠宮さんは覚えられてないのー?」
篠宮さん。
そう言えばテスト週間前に千波が言っていたような気がすると、頭の隅で思いながら千波の発言は無視しておいた。
