甘ったるい声を出しながら千波は突っ伏せている優一に目を向ける。
「…何が?」
「えー? だって加賀見くん、まじ女の子みたいなんだもん」
槙が疑問を投げ掛けると、千波は笑って答えた。その答えに千洋は苦笑する。
「それ、優一の前で言うなよ」
「分かってるよぉ。言ったら怒られちゃうもん」
わざとらしく舌を出した千波に、槙が気持ち悪いと口にする。もちろん本心ではないが、それも千波は分かった上で反論した。
中性的な顔立ちをしている優一は、それをコンプレックスとしている。あと少し髪を伸ばせば、初見の人だと女性だと思ってしまうのも仕方ないほど綺麗な顔だが、背が高い方なのでそちらで性別を判断される方が度々ある。
いつかクラスの生徒に女顔と言われた際にぶちギレたことがあり、それを目の当たりにした千洋は、机に手を掛けていた優一を慌てて宥めたのだ。その話を多江たちにして以来、多江たちも優一の顔については本人の前で触れないようにしている。
