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あっという間だった。
あっという間に中間テストが終わっていた。
今回のテストも今まで通りに、いやそれ以上に勉強に励んだお陰でいい点数が採れたと多江は思っていた。自己採点をしてみても八十点代後半、九十点代前半は採れている自信があった。
もしかしたら今度こそ、学年での一位を取れたかもしれない。そんな期待さえ持ち始めた多江は酷く上機嫌で、背後に近付いていた千洋に気付きもしなかった。
「おーい聞いてるかー?」
「え……」
背後から顔を覗き込まれ、大声を上げそうになったがなんとか抑えてはぁとため息をついた。
「何? 急に出て来ないで欲しいんだけど」
「いやさっきから呼んでたし。反応しないから来たんだよ」
「そうなの? それはごめんなさい」
千洋は相変わらず茶色の長めの髪を弄りながら、別にいいけどと口元に笑みを浮かべながら言った。
「それで、何か用事?」
「おー。それ、用事な。テスト終わったから遊び行かねえ?」
