「ねぇ…。私ってこの家のモノじゃないでしょ?」「何言ってるの?」
自分が養子だと気づいた17歳の春。1人だけずば抜けて、顔のつくりや、性格が違うのに気づいた。「昨日…聞いたの…私が養子だってコト…」言葉をつまらせる母に少し同情する。「なっ…何言ってるの?アステル、貴方は正真正銘、うちの娘よ…?」と、あせった顔付きはまるで私の母じゃない。そもそも、血のつながりもない。そんなコトは前から分かっていた。私だけ二重まぶた。茶髪。前から怪しいとは思っていた。

「そうだ。アステル。買い出しに行って来てちょうだい。」と、私にメモを渡し、ニコニコ微笑んでこちらを見ていた。「えぇ。」メモを受取ると、ヒラヒラ手を降った。向こうも手を降ったのを確認すると、歩き出した。
「パンくらい…自分で買えばいいじゃない。」
ブツブツ文句を言いながら、街を歩いていた。「おネェさん、遊ばない?」「今、忙しいので。他の人当たって。」街を歩いていると、ほとんど毎日、男性に声をかけられる。そのせいか、よくお見合いの話が上がる。パン屋さんに着くと、
フランスパンを買い、店を出た。ミルク亭のパンはずば抜けて美味しい。よく家を抜け出して、よくパンを会に来る。ミルク亭と言ったらやっぱりミルクパン。
家に着くと、玄関で両親の話が聴こえた。「アステルの食費、いただいてくるわ。」「あぁ。気をつけて。」高いすんだ母の声。低い、詰まった父の声が耳に通る。