タケルと元通りに戻れて嬉しかったのは実果だけじゃない。
俺だって、親友を失うのは怖かったんだ。

「俺、お前のことまだ許してないからな」

連れ立って1-Dに向かう途中、タケルが言った。

「分かってるよ」

「違ぇよ。
実果のことじゃなくて、K大のこと」

俺は驚いてタケルを見た。

「お前が譲ったって知ってたら受けなかったのになー」

口を膨らませて言うタケルに俺は思わず笑ってしまった。
だからタケルには言うつもりなかったんだよ。

「あーあ。
せっかくお前に勝ったと思ったのに」

いつもお前に負けてばっかりだとつぶやくタケルに、俺は内心で首を振る。

少なくとも、器の大きさだけは敵いそうもないや。