僕が見た実早ちゃんは…“福永実早”だった。
いつになく真剣な表情で共演者と打ち合わせをする様子を僕は見ていることしか出来なかった。
輝いていた―…。
僕が隣にいる時には絶対しない表情。
遠い――…。
実早ちゃんという存在の遠さを改めて実感した。
「実早さんを呼んできますね。きっと喜びますよ♪」
そう言って歩きだそうとした香川さんを僕は止めた。
「……いいです。」
実早ちゃんの邪魔はしたくない…。
「そうですか?じゃあ見学だけでもしていって下さい。もうすぐ撮影も再開しますから」
香川さんは近くにあった椅子に僕を座らせると、届けた書類を持ってどこかに消えていった。



