その女性が助手席に乗り込むと、陸の車はあっという間に走り去ってしまった。


 噂は何かの間違いじゃないか。そう思いたい気持ちが私の中にあったんだけど、今のを見て、間違いではなかったと思うほかなかった。


 彼女の陸に向けた笑顔、そして彼女に向けた陸の笑顔が、いかに二人が親密な関係かを物語っていたと思う。


「やっぱりいたんだ、彼女……」


 なんか、泣きそう……

 って、なんで私が泣きそうになってんだろう。あ、そうか。夏姉が可哀想だからよね。うん、そうに違いない。


 そんな事を考えて呆然としていたら、

「あの……、ちょっとすみません」


 近くで男性の声がした。