「陸ちゃん!」


 “陸ちゃん”?

 夏姉は差し出された陸の手を、両手で包むように握っていた。


「は? あの、おか……」


「陸ちゃん、可哀想……」


「いや、別に……。それより、おか……」


「お母様はお達者なの?」


「い、いや、俺がガキの頃に死んじまった。それより、おか……」


「ごめんなさい! 辛い事を聞いてしまって」


「別にいいって。それより、おか……」


「よかったら私をお母様と思って? ね?」


 私は陸の手から空のご飯茶碗を取り上げた。


「お代わりね?」


「はい」


 本来はジーンと来るシーンなんだろうけど、何だろう……。なぜかちょっと、イラっとした。