陸の言葉で、私は初めて自分の失言に気付き、慌てて手で口を押さえた。もう遅いんだけど。


 陸と三島夫人は、この車でホテルに行ってるのかあ、って想像してたから、『どこ行く?』って聞かれて、『ホテル』と言ってしまったのだ。


「俺はそれでもいいぞ。ほんとに行くか? ホテルに」


「そんなわけないでしょ? あれは冗談というか、ちょっと考え事してたから……」


「考え事? どんな?」


「それは、そんな簡単には言えない事なわけで……」


「大体は想像がつくよ」


「ほんとに?」


「ああ。こうしていても時間がもったいないから、走りながら話さないか?」


「いいわよ?」


「じゃあ、取り敢えず高速に乗って、西に向かって走るぞ?」


「はい」


 私は陸と三島夫人の事を話そうと思う。どうせそれが気になって、ドライブを楽しむどころじゃないから。陸もそれがわかってるみたいだし。