「あのさ、」

「?」

「どこから来たの?」



少女の表情が少し硬くなる。
直球過ぎたか?



「もしもの時の為に、知っていた方がいいと思って・・・」


「もしも?」



少女の瞳が不安気に揺れる。


「一緒に暮らすんだし、俺にもいろいろ責任あるから。・・・ないと思うけど病気とかそんな時、連絡先とかあった方がいい・・・」



「だよね・・・悠ばっかりに迷惑かけられないもんね。」


急に大人びた口調になる少女に俺は切なくなる。

彼女の顔は寂しげに陰っていた。


この子にはそんな顔、似合わない。

少女の事は何一つ知らないけど、くしゃくしゃの泣き顔や怒った顔、少女は全力で喜怒哀楽を伝えてきた。
それは八咲の魅力だと思う。

今にも消えてしまいそうなそんな顔は八咲には似合わないんだ。



俺は少女に掛ける言葉も思いつかず、住所と電話番号を紙に書いてもらい、"もしもの時だけに使う"ことを約束した。