新居は、会社から程近い所にある高級な賃貸マンションの一室。


 結衣の両親は、実家で共に暮らす事を強く望んだ。結衣は一人娘であり、十分過ぎるほど広い屋敷であれば、それは当然の事だろう。


 だが、それでは結衣を虐めにくい。だから俺は結衣に言わせた。「しばらく二人だけで暮らしたいの」と。


 結衣を甘やかし放題の両親は、渋々ながら娘の頼みを聞いたわけだ。娘が毎日虐められるとも知らずに……


 こうして、俺と結衣の偽りの結婚生活が始まった。