そう言えば、『今度、海君が孝司さんの会社に行くのよ』と、結衣が言ってたかもしれない。それにしても副社長? たしか年は俺と同じかひとつ上ぐらいのはずだ。その若さで副社長なんて、アリかよ?

 余程優秀なのか、単に社長の甥だから、ってだけの事か……。たぶん後者だろうけどな。


「こちらの部に何かご用で……?」


 チッ。部長の奴、自分の息子ほどの若造にペコペコしやがって。だからサラリーマンは嫌なんだ……


「いえいえ、ちょっと通り掛かりに寄ってみただけです。えっと……、ああ、いたいた」


 一条海は部内を見回し、俺を見つけるとそう呟いた。