「食べるよ」

 おまえが俺のために作ってくれる、最後の飯を……


「よかった。急いで用意しますね?」


 悲しそうだった結衣の表情が、一瞬で笑顔に変わった。まるで花が咲いたように。


「慌てなくていいよ。時間は十分あるから」


「はい」



 それからしばらくして、俺の目の前に並んだのは、ごくごくオーソドックスな和風の朝飯だった。


 炊きたてのふっくらしたご飯からは白い湯気が立ち、豆腐とワカメの味噌汁からも、湯気と味噌の香が立ち登っている。


 それを一口啜ると、

「うん、美味い」と思わず声を漏らした。


「ほんとですか?」


「うん、ダシを入れたんだな?」


「はい、今日はちゃんと入れました」


 前は味噌汁にダシが入ってなかった。味噌だけの味噌汁なんて、とても飲めたもんじゃなかった。