おもむろに俺も起きだし、しっかりとスーツを着込み、手に鞄をぶら下げてダイニングへと向かった。


 その足は、鉛のように重かった。まるで絞首台に向かって歩く、罪人のような心境だ。



 キッチンからは、何やらいい匂いがして、カチャカチャとかパタバタとかの物音がしている。おそらく結衣が、朝飯と格闘している最中なのだろう。


 ダイニングに来た結衣は、俺に気付いて目を丸くした。


「お、おはようございます!」


「おはよう」


「今朝はずいぶん早いんですね?」


「ああ。早めに出社しようと思って……」


「じゃあ、朝ご飯は……」


 結衣は、途端に悲しそうな顔をした。結衣って、こんなにも表情が豊かだったんだなあ。