ふと結衣の手に目が行った。アームレストに乗せられた、白くて子供のそれのように小さな手に。


 爪は、短く切り揃えられていた。前からそうだったろうか……。いや、違う。


 俺は、例のコニャック入りのチョコの、ラッピングを解いた時の結衣の手を思い出した。確か、爪は長く伸ばされていて、ピンクのマニュキアが塗られていたはずだ。

 今は、マニュキアも塗っていないようだ。

 その手にそっと俺の手を重ねると、結衣の手はカサカサしていた。炊事やら何やらで、手が荒れているのだ。


 俺はこの子に、ずいぶん無理をさせちまったんだな……


 俺は結衣の頭と膝の裏に手を差し込むと、ひょいと彼女を抱き上げた。華奢な結衣の体は、拍子抜けするほど軽かった。


 そのまま寝室に向かって歩き出すと、結衣は大きな目を、ゆっくりと開いた。