「おまえ、さ。遅ぇんだよ」 適当な男とのディナーの帰り、マンションのエントランスに入るところで、ボソッと呟く声が聞こえた。 「……え?」 広いエントランスを見渡すと、長谷川くんが大きな体を丸めた状態で近寄ってきて、指を天にスッと向けた。 「見てみろ。雪がみぞれになってる」 「…………」 「……ったく。そんな中、待たせるとか。 おまえ、ほんっと、何様!? ……って感じ」