静かに並木を揺らす風が、何故だか淋しさの象徴のように感じる。


一定のリズムで音を立てる葉の声は、一定の速さで俺の耳を抜ける。



昼間にはいつも、いきいきとして見えるこの風景。

それが全て、今は止まっているような感覚がして気持の悪い。



『昼間にキョーよりもだいぶ年をとった奴等が少し来ることもあるが……』

『以前ここへ来た黒い服を着た2人の男が言っておったのじゃ』

『「あの桜を中心にして3メートルの位置がちょうどいいですよね」とな。
それで3メートルだけ知ったんじゃ!』



今思い返すと、いろいろな出来事が今日へ繋がってるんだとわかる。


子供達が走り回る公園を視界の片隅に入れながら、俺は曲がり角を右へ曲がった。


そのまままっすぐに進んで家に着くと、家の庭にはよく見かける、俺のとは違う自転車があった。



それを横目で見ながら、俺はゆっくりとドアを開けた。