いつ晴れるか分からない、濃い霧を前に、木暮と西郷の二人は諦め、いつしかカードを始めた。
 カードは西郷が持っていたようだ。
 黛には、ポーカーゲームをしているのだと、すぐに分かった。

「私は二階にいます。何かありましたら、声を掛けて下さい」

「ああ、わかった」

「もしかしたら、ちょっと篭るかもしれませんが、すみませんね」

「ああ、分かってるよ」

「お仕事なんでしょう。頑張って下さいね」

 木暮が顔を向けずに応対する西郷に変わって、にこやかに答えた。


 二人は時間を忘れて、ポーカーゲームに磯染んだ。
 いつの間にか、寝食をも忘れて夕方になっていた。

「ああ、負けた負けた」

「すみません。ツキがあったようで」

「いや、楽しかったよ」

「私も楽しかったです」

 二人は暫く余韻に浸っていた。
 西郷が大きく溜め息を着いたあと、ふと、二階に目をやった。

「作家センセイは執筆中だな」

「調子がよいのでしょうね」

「物音ひとつしないな」

「書くのにそんな音はしませんよ」

「でも、昼メシ食べてないぞ」

「そうですね」

「様子を見に行こう」

「邪魔したらマズイですよ」

「差入だよ」

 西郷はそういって、木暮に珈琲を入れさせた。