「...乃木は、心の事好きなんだよな。」

「急になんやねん。」

「いいから。」

「好きやけど。」

「ふ、ふうん...。」

「何かあったのか。」

ぎくり。乃木が風呂に入ってきてから、初めて俺の顔を見た。「べつに。」「嘘つくな。」動揺がバレたらしい。


「その頬、川村にやられたんやろ。」

「...そうだよ。」

「へえ。」


対して興味なさそうに乃木は言う。ほんと、何考えてるのかわからない。余裕そうな態度がむかつく。

「さっき、川村が顔真っ赤にして出ていったの見たで。」

「...俺のせいだ。」

「ほっといていいん?」

「どうすればいいのかわかんねーんだよ。」

「自分、ほんまに男か?女みたいななりしてきしょいわ。」

「喧嘩売ってんのかよ!」

「行動くらい男らしくしろっちゅーねん。」


もしかして、乃木に励まされてる?こいつ、無口で無関心なやつじゃなかったのか?

「え、と、ありがとう?」

「...俺は川村に、今だけでも幸せになってほしいだけや。勘違いするな。」

「今だけ?」

気にかかる言い方だった。聞き返したけどそれ以上乃木は何も話そうとしない。
俺は浴槽からあがり、頭と全身を洗ってでることにした。


「あ、乃木。」

「...。」

「お前、心の事好きなんだろ。俺、お前には負けないから。あと、心の事本気で好きなら女と遊ぶのやめろよな。」

「は?」

「じゃあな。」